No.10

〇No10 鹿島紀行（2015.04.）

　春の風立つ日、片雲の風に誘われて、国道51号線上、鹿島海岸をたどって大洗海岸まで行きたくなった。途中、鹿島に芭蕉の「鹿島紀行」に記述されている根本寺があることを思い出し訪ねた。今回の出発点、鎌ヶ谷は「鹿島紀行」に道中の景色の一つとして記述されている処でもある。芭蕉が鹿島での月見に誘われて根本寺に出向くことになったのは、当寺の仏頂禅師が深川の芭蕉庵に近い臨川庵（後に寺となる。）に住んでいた頃、芭蕉に禅の手ほどきをした縁であると言われている。
　芭蕉は曾良外を伴って、深川から小名木川を行徳まで船で行き、ここから木下街道を徒歩で八幡（市川市）、かまがいが原（鎌ヶ谷市）を経てふさ（我孫子市）まで歩き、漁家で一旦安いだものの、晴れわたった月夜を船に乗って鹿島まで行ったとある。
　鹿島での夜はあいにく雨模様であったと記されているが、夜半の雲の切れ目から月は僅かに垣間見られたのであろうか。
　鹿島に根本寺を訪ねてから数日後、深川の近くに所用が生じ、ついでに町の一角にある芭蕉庵跡や芭蕉博物館も再訪してみたくなった。

　史跡に触れることで、歴史上の出来事を僅かでも追体験した気持ちになれば、これも又、楽しからずやである。

(左)　芭蕉庵跡-（撮影'15.03.30.）－隅田川の小名木川が注ぐ深川の一角に芭蕉稲荷神社がある。その境内に「芭蕉庵跡」の石碑が建つ。
(中)　芭蕉庵の銅像-（撮影'15.03.30.）-芭蕉稲荷神社から僅かな距離に小高い築地があり、隅田川が一面にのぞかれる位置に芭蕉の銅像が置かれている。
(右)　芭蕉庵の銅像-（撮影'15.03.30.）-芭蕉が鹿島に出かけたのは44歳で1687年のことである。このあたりは江戸の新開地として埋め立てが行われていたが、市中から外れ未だ寂しいところであっただろう。芭蕉は、今のこの大都会の風景をどんな感慨で見ているのだろうか。深川の当時の風景

(左)　臨川寺-（撮影'15.03.30.）-芭蕉庵から数百メートル離れた清澄庭園の近くの、清州橋通りに面したところに、現代風建築に建て変わっている臨川寺を探し当てた。
(中)　根本寺-（撮影'15.03.23.）－鹿島市内の古びた住宅地の一画に、境内への入口と山門を見付けた。元々は大きな伽藍を持つ寺であったが、江戸末期の天狗党の乱の戦火等があって縮小されたようである。
(右)　根本寺境内-（撮影'15.03.23.）-境内はさすがに古刹を感じさせる。背後には城山の森が茂っている。澄んだ空の中で月夜に照らされればとの思いが浮かんだ。境内には「月はやし梢は雨を持ちながら」等の芭蕉の句碑が多くある。

北総台地の菜園から季節の便り(2015.04.）から

〇No10 鹿島紀行 （2015.04.）

〇No10 鹿島紀行（2015.04.）